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業務効率化の“作る楽しさ”を、AIの時代にもっと多くの人へ。kintoneを“データの置き場所”として届けたい

執筆者の写真: キンビーズ応援団(Cybozu)
キンビーズ応援団(Cybozu)
5 時間前
読了時間: 8分

Ribbit’s works /日本クレアス税理士法人 福山本部 池永経営

足立 圭一朗さん

2019年、入社したばかりの会計事務所でkintoneの担当を任された足立 圭一朗さん。日報と原価計算から始まったkintoneは、今では顧客情報から業務の進捗、請求までを管理する基幹システムといえる存在に。


業務のかたわら個人でkintoneプラグインを開発し、約30本を無償で公開し、技術系のkintone エバンジェリストとして発信を続けています。今回はそんな足立さんに、kintoneとの出会いとプラグイン開発への想い、そしてAI時代のkintoneについてお聞きしました。

何も分からないまま任されたkintone担当。kintoneならではの“アプリ単位”が業務を理解する助けになった


足立さんが勤めるのは、広島県福山市の税理士法人。足立さんがkintoneに出会ったのは、2019年7月の入社直後でした。


「それまでkintoneのことはまったく知りませんでした。ちょうど会社で導入しようという計画が立ち上がっていて、一部の人間で試験的に使っている段階でした。そこでkintoneを初めて知って、何も分からないなか担当のような形で任命されたんです。当時はkintoneだからどうこうというより、がむしゃらに目の前のことをこなすのに必死でした。」


最初の目的は、従業員の日報とそこから算出する原価計算。オンプレミスのソフトからクラウドサービスへ移行し、マルチクラウドで業務改善を進めるという会社の方針の一環でした。入社したばかりで業務への理解も浅く、しかも自分が選んだわけではないシステム。普通なら最初の壁にぶつかりそうな状況ですが、足立さんは「ある意味、kintoneで良かった」と振り返ります。


「業務の知識もシステムの知識も薄いところからのスタートでしたが、kintoneのアプリという単位が、理解のステップを進めていくのにちょうどいい“チャンク(意味やデータのまとまり)”のサイズだったんだと思います。一つずつ業務をアプリにしていくなかで、その分野に一番詳しい社員とやり取りをしながら、どうアプリに落とし込むかを伺う。それが僕自身の業務理解にもすごく役に立ちました。」


入社当時60名ほどだった組織は、今では90名ほどに。システム化が進んでいる本部として、足立さんの所属する福山本部で積み重ねたノウハウをほかの本部へ広げていく動きも出てきているそうです。

システム担当が各部署の席に座る。“物理的な距離”が、小さな声を拾ってくれる


kintoneの活用がここまで広がった背景には、実際に使う従業員の意見を丁寧に拾ってきたことがあるといいます。


「システムエンジニアが言うべきことではないかもしれませんが、物理的な距離が大事だと思っています。『ちょっと使いにくいけど、言うほどのことじゃないな』というところをどれだけ拾えるか。目の前にいるのと別のフロアにいるのとでは、それだけでも結構違うと思うんです。

オフィスでは、システムのメンバーが一か所に固まるのではなく、定期的に席替えをして、会計や社会保険の部署などいろいろなところに混ざって座っています。それをコロコロ変えるのと、日常的に雑談レベルで話を伺うこと。それが大きかったんじゃないかと思います。」


システム専任は、足立さん含め3人。少人数だからこそ、現場の隣に座るという工夫が効いていることが伝わりました。

痒いところに手が届くプラグインを、個人で作って公開する


足立さんの名前を知っている方の多くは、ブログ「Ribbit's works」で公開されているkintoneプラグインを通してではないでしょうか。今や多くの方に活用される足立さんのプラグインですが、個人開発を始めたきっかけも、社内でのkintone運用にあったそうです。


「アプリを作っていくなかで、痒いところにちょっと手が届かない部分が気になってきたんです。ただ、業務の時間を使って改善するほどでもない。それなら、作ること自体が楽しいので個人的に作って、透明性の高い環境で公開してしまえばいいんじゃないかと。最初はまだkintoneにも慣れていなかったので、ほかの方の目に触れる形で作りたい、という気持ちもありました。」


なかでも思い入れがあるのが「関連付けないルックアップ」プラグイン。社内のほとんどのアプリに入れているそうです。


「案件アプリから顧客情報をルックアップしていたんですが、CSVで書き出して取り込み直そうとしたら、なぜかエラーで取り込めない。原因をたどると、顧客の法人名が変わっていたんです。ルックアップのキーには、使う人が分かるように顧客名を設定しがちですが、それが一意のキーと一致しないという問題をなんとかしたかった。今は標準のルックアップには変わらない顧客IDを設定して、使い勝手のために顧客名でも探せるようプラグインを組み合わせています。」


こだわっているのは、使う人だけでなく、kintoneの管理者にとっての使いやすさです。


「プラグインの設定画面には、実際の機能と同じくらい時間をかけて作り込むようにしています。自分も、何度も設定画面を開いて、保存して、画面で確認して……を繰り返してきたので、一度見れば『この機能を有効にするとこう動く』とイメージできるように意識しています。」


現在では多くの企業に利用され、要望を受けて新しく作ったプラグインも増えてきたそうです。週に費やす時間は決して少なくないといいますが、本人に負担という感覚はあまりないと語ります。


「たくさんの方に使っていただくなかで、いろいろな要望をいただきます。社内にも実際に使う人がいて現場の課題は伺っていますが、それとは違う視点で『こういう使い方をしていて、こんな機能があったらありがたい』と聞けるのが、すごく勉強になるんです。業務で伺ったことが個人開発に活き、個人開発で受けた問い合わせがまた自社の業務改善につながる。もう機能として完結しているものでも、自分が気になったら改善してしまうので、必要以上に時間をかけている部分もあると思います(笑)。でも、やっぱり好きだからというのが一番の原動力で、苦労とは感じていないんです。」


社内と社外を行き来しながら、作るものも自分自身も磨かれていく。その循環を「好きだから」で回し続けている姿がとても素敵です。もともと前職ではバックエンド寄りの開発をしていた足立さん。kintoneのカスタマイズを通してフロントエンドの知識を身につけられた経験も、発信を続ける理由の一つだといいます。


「何もない環境からフロントエンドを学ぶのに比べて、kintoneのカスタマイズを通すとかなりスムーズに理解できたと思っています。これからカスタマイズをしたいと考えている人にとって、kintoneはすごくいい環境です。そこを少しでもサポートできたらという思いはありますね。」

生成AIでノーコードの価値は小さくなる。それでもkintoneが必要な理由


生成AIの影響を「本当に身近な部分で体感している」という足立さん。生成AIが台頭するこれからの時代に、kintoneをどう捉えているのかを伺いました。


「僕がkintoneに最初に触れたときに感じた面白さを、生成AIと組み合わせることで感じる方がこれから増えるんじゃないかと思っています。僕はもともと開発に触れていたので、カスタマイズで自分の好きなように細かく調整できるのが楽しかった。今までそこに触れられなかった方も、AIを通して手軽に調整できるようになり、『kintoneってすごく使いやすいじゃないか』と思う方が増えるはずです。


正直に言えば、kintoneの代名詞であるノーコードの価値は、生成AIによってかなり小さくなると思います。自然言語以上のノーコードはないですから。ただ、従業員が共通で蓄積していくデータの置き場所は、やはり何か統一したものが必要です。アプリ自体は簡単に作れるようになっても、それを業務フローにどう乗せるのか、既存の業務とどうつなげるのかを考えるうえで、kintoneが活かせるところは十分にあります。


たとえ将来、従業員一人ひとりのAIエージェントが裏でデータを登録してくれるようになったとしても、共通の置き場所としてkintoneは役に立つと思っています。ノーコードツールがAIで不要になるからkintoneも不要になる、という単純な話じゃないんだよ、ということを伝えていきたいですね。」


一方で、手軽に作れるようになるからこそのリスクにも目を向けています。


「僕自身も最初はそうでしたが、できるからkintoneでやろう、となってしまうことが増えると思います。後々の保守を考えるとkintoneでやるべきではないかもしれない。ガバナンスまで見通して判断するより先に『作れるんだから作ってしまえ』が来てしまう。権限管理やガバナンスはないがしろにされやすいところです。恥ずかしながら、当社でもそこはまだ弱い部分で、管理する人数が少ないからカバーできているという状態です。自社でも取り組むべき課題だと思っています。」


作った“その後”まで見据え、技術とユーザー、両方の立場を知る足立さんならではの視点には大きな説得力がありました。

最後に、kintoneを通してこれから実現したいことをお聞きしました。


「僕が最初に触れたときに感じた業務効率化の楽しさが、生成AIによってもっと身近になると思うので、それを感じてもらえる人が増えればいいなと思います。今は生成AIを組み込んだプラグインの開発も進めています。公式機能としては責任の所在などの問題で実装しにくい部分を、プラグインとして作ることで、生成AIとkintoneをより摩擦なくつなげる助けになれたらと考えています。そして、ものを作ること自体の楽しさだけでなく、もう少し俯瞰した全体の効率化の助けになれるよう、作った後のことまで見据えたコンテンツを発信していきたいです。」


足立さん、ありがとうございました!

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