kintoneの入口で迷う人を減らしたい。公務員だからこその中立性を生かし、楽しみながら学び合える場を

井上 望さん

情報システム部門の経験がないながらも、独学でAccessを使った業務改善に長年取り組んできた井上さん。行政という特殊な立場で活動しながら、個人としてkintoneコミュニティにも深く関わっています。今回はそんな井上さんに、行政ならではのkintone活用の難しさと、これから実現したい理想についてお聞きしました。
独学で培った「現場の声を聞く力」で、行政のIT活用を支えてきた
井上さんは情報システム部門の経験こそないものの、パソコンなどが好きだったことから、30年近く前から職場でのシステム担当やMicrosoft Officeを使った業務改善、ボランティアで福祉関係の仕事の業務システム化などに携わってきたといいます。
「独学ではありますが、昔からAccessを使って業務改善や手伝いをしていたので、基本的なデータベース的な考え方やプログラミングの流れについての知識はありました。それに加えて、実際に現場の声を聴きながらシステムを作ってきた経験があるので、ITに詳しくない人の声をうまく聞き取って要件に落とし込むことや、ITに詳しくない人と専門家との通訳役になることは、得意なほうだと思っています」
kintoneに出会ったことをきっかけに、「人を巻き込むことの大切さ」を学んだという井上さん。その学びを、業務の関係者や知り合いに伝えながら、もっと広めていきたいと考えているそうです。
「天の時・地の利・人の和」が重なった、保健所でのkintoneアプリ作成
井上さんにとって最も大きなサクセスストーリーは、北九州市保健所内でのkintoneアプリ作成だといいます。2023年のkintone AWARDにも登壇したこのエピソードには、AWARDでは語りきれない多くの背景があったそうです。
「未曽有の事態という『天の時』、連携協定を通じたkintoneとの偶然の出会いという『地の利』、そしてトップダウンによる現場への意思決定の適切な伝達、現場の理解のある上司や情シス部門のバックアップといった『人の和』が重なって成り立った、極めて不安定でありながら大きな成功事例でした。組織でのサクセスストーリーとしては、自分の人生でこれを超えることは、おそらくないと思います」
閉域網という特殊な条件下で「カスタマイズをしなければならない」状況に置かれたことが、imoniCamp(2023年ごろまでCybozuが開催していたカスタマイズ勉強会)をはじめとする様々なコミュニティとの出会いにつながり、kintone hiveへの登壇を通じて多くの人と出会うきっかけにもなったといいます。限られた条件の中でも、できる限り良い形に近づけていく。そうした姿勢が、行政という難しい環境の中で成果につながったのですね。
行政職員向けの登壇や発信で、kintoneの活用ノウハウを伝えてきた
井上さんは、行政職員を対象とした第15回全国都市改善改革実践事例発表会をはじめ、kintone hiveやkintone show+case unlimited、トヨクモ関連のイベントへの登壇なども重ねてきました。
「そうした登壇をきっかけにkintoneに関することをnoteに掲載したり、連携サービスやプラグインについての感想などをXで不定期に発信したりしています」
また、kintoneの導入初期のユーザーが訪れることの多いkintoneオンラインユーザーコミュニティ『キンコミ』では、解決や深い議論につながるようなコメントを心がけているといいます。登壇のような目立つ発信だけでなく、コミュニティの中で一人ひとりの疑問に丁寧に向き合う姿勢からも、井上さんらしさが感じられます。
公務員だからこその「中立性」を、相談しやすさに変えていきたい
行政の現場では、トップダウンで導入が決まり、現場が目的を理解しないまま「DXしなさい」と指示されるケースも少なくないといいます。一緒に考えてくれる情シス部門の担当者や適切な伴走支援業者がいない場合、熱意ある推進者がいなければ普及が進みにくいという課題を感じているそうです。
「エバンジェリストは個人の活動とはいえ、多くは営利企業に所属する方や個人事業主であり、行政にとっては気軽に相談しにくい場合もあるのではないかと感じています。自分の場合は公務員なので、『中立性が強く求められる』ことが職種として広く知られています。また、現場でkintoneアプリを作成し、導入してきた立場から、同じ悩みを抱える立場の公務員の方にとっても、相談しやすいと感じてもらえる部分があるのではないかと考えました」
導入はしたものの活用に悩んでいる行政職員に対し、気軽に相談に乗れるような活動をしていきたいと語る井上さん。「kintoneの入口で道に迷う人を減らしたい」、そして「楽しむことこそ業務改善の第一歩だという想いを広めたい」というのが、井上さんの理想です。限られた予算と時間のなか、十分な知識もないまま業務改善を任される担当者が、一人で悩まずに済むように。『キンコミ』のような気軽に相談できる場を、みんなで学び合いながら整えていきたいと考えているそうです。いつも真摯にkintoneやコミュニティと向き合われている井上さんの、これからのご活躍に期待が膨らみます。
井上さん、ありがとうございました!




