プロジェクト・アスノート 松田 正太郎さん
kintoneを使った業務改善ビジネスとして『プロジェクト・アスノート』を立ち上げ、情報発信、業務改善支援、人材育成などを行なっている松田 正太郎さん。ブログでの発信だけでなく、kintone Caféなどのコミュニティー活動、2020年からは自身のYouTubeチャンネルを開設して動画をアップするなど、精力的な活動を続けています。
今回は、そんな松田さんにkintoneとの出会いや、kintoneを通じた社会への想いをうかがいました。
化学プラントの技術スタッフから「社内の業務プロセスを改善したい」とIT部門へ異動
はじめて入社した会社では、化学プラントの技術スタッフとして配属された松田さん。配属から5年ほどは理系の技術職として働いていましたが、仕事を続けて行くうちに徐々に興味が技術のことよりも「業務プロセスや、やり方・仕組みの改善」という方向に移っていったそうです。その後、ERP(基幹システム)の導入に伴うビジネスプロセスの再構築等の業務を経て、マネジメント部門に移り、さまざまな部門の業務をITを使って改善していくという業務を始めました。
「最初は自分でExcelでマクロを組んで簡単なシステムを作ったりしていましたが、所属がIT部門になり、エンジニアチームと連携してスクラッチ開発で業務システムを作ったり、いろいろなことを経験してきました。私がIT部門に移った数年後(2011年)にkintoneがリリースされました。リリース直後から存在は知っていましたよ。ただ、第一印象は『面白いけどまだ使えないな』という感じだったので、すぐに導入ということはありませんでした。でも、めちゃくちゃ興味や関心はあったので、動向はずっと追っていました」
2013年ごろ、ついにkintone導入の契機がやってきます。
「当時所属していた会社の人事部では、社員台帳管理や異動履歴管理、労務費管理などの社員管理を、担当者1名の属人化した方法で管理しており、複雑怪奇で超属人化した『おばけExcel』が多数存在していました。その担当者の異動が決まったタイミングで、kintoneの導入を決定しました。従来のシステム開発と比べて、驚くべき費用対効果のkintoneでスピーディーに開発が進んでいく様子がとても面白かったです」
「コミュニティ」の存在が、松田さんがkintoneエバンジェリストになる第一歩に
「あれは第1回目のkintone hiveの懇親会の場でした。当時kintoneのプロダクトマネージャーだった方から『松田さん、kintone hiveに登壇してみませんか?』と声を掛けられました。もちろん、二つ返事で『やります!』と答えました(笑)」
導入したkintoneの運用が軌道に乗り、その後社内のさまざまな部署へkintoneの導入を行なっていった松田さん。その取り組みがサイボウズ社員の目に留まり、第2回kintone hive(2015年)への登壇が決まりました。順風満帆にkintoneエバンジェリストへの道を辿ったと思われる松田さんでしたが、意外にも最初は不安を感じる部分もあったそうです。
「kintone hiveへの登壇が決まってから『もっと勉強しなきゃ』という意識が芽生えました。そこで、ユーザーが有志で開催しているkintoneの情報交流会『kintone Café』に参加することに決めました。しかし、仕事終わりの夜の時間に開催されるような勉強会なんて今まで参加したことも無かったし、当時はkintone関係の知り合いもいなかったので、最初は正直少し怖かったです。でもそこでやめるのではなく、逆に登壇させてもらったり、運営メンバーとして関わるという選択をしました」
しかし、その行動こそが今kintoneエバンジェリストとしての活動につながっている、と松田さんは語ります。
「ユーザー同士で情報交換をするうちに、kintoneへの理解もどんどん深まっていきました。また、さまざまなkintone界隈のメンバーと知り合えたことも大きな影響です。いろいろな人と交流するうちに、自分が本当にやりたいことも明確になってきました」
プロジェクト・アスノートとしての活動のはじまり
はじめは「業務プロセスを改善したい」という想いで、技術研究職からIT部門へ異動した松田さん。しかし、kintoneやkintoneのコミュニティを通じて、いつしかシステムを作るよりも「業務改善ができる人を増やしたい」「業務改善職の認知を高めたい」という気持ちが芽生えたそうです。
「2017年に『プロジェクト・アスノート』を立ち上げて、個人の活動を開始しました。プロジェクト・アスノートでの活動は主に『kintoneについての情報発信』『お客様のkintone導入・活用支援』そして『業務改善職を広めるためのコンテンツ』です。もちろん、本業の方でもkintoneを取り扱っていますし、そちらも学ぶことが非常に多いので、複業という形で活動しています」
近頃は独学でkintoneのカスタマイズにも着手しているという松田さん。プログラミング知識ゼロの状態から基礎を学び、2020年1月には、kintone認定カスタマイズスペシャリストの資格を取得されました。
「本当にゼロからのスタートだったんですけど、一時期は『cybozu developer network』に張り付いて、ひたすらkintoneカスタマイズについて勉強しました。このサイトには本当にたくさんのネタがあって、非常に勉強になりました。ただ、自分で吸収するだけじゃなく、やったことを全てアウトプットしました。developer networkのコミュニティーの質問に回答コメントを書いたり、ブログ記事で、他にこれからkintoneカスタマイズの勉強をしようとしている人のためのガイドになるような記事を書いたり。とにかく、kintoneをもっと使おう!と思ってくれる人を増やしたいという想いがあります」
“ド素人が始めたkintoneカスタマイズ”略して『ドシキンカス』など、ユニークな視点で、かつ分かりやすく記事をまとめていらっしゃいます。
※松田さんは、ご自身の経験をもとに2019年のkintone hack決勝戦にも出場しています!詳しくはこちら(https://logmi.jp/business/articles/322340)
kintoneを使って『業務改善職』を世の中に広めていきたい
インタビューの途中「エバンジェリストとして、kintoneの解約率も減らしていきたい」と語っていた松田さん。ユーザーでありながら、サイボウズの理念に共感し、kintoneを外側から支えてくれています。その想いの原動力について、松田さんは次のように話してくれました。
「最初はkintoneの便利な使い方など、基本的な情報発信からスタートしました。しかし、活動を続けていくうちに『ただkintoneの情報を発信するだけでなく、その情報を使って社内の業務改善ができる人を育てていきたい』という新たな目標ができました。私は、どの会社にも業務改善を中心に行う『業務改善職』が必要だと感じています。しかし、まだまだその概念は日本企業には広まっていませんし、活動が正当に評価されることも少ないという状況です。最近は勉強会を開催したり、YouTubeで動画を配信するなどして、啓蒙活動も行なっていますが、この『業務改善職』という新しい職種を語る上で、kintoneというツールはとても相性が良い。日本企業の業務改善に、kintoneは非常に重要な役割を担っていると思います」
業務改善職勉強会(Facebookグループ)
最後に、kintoneエバンジェリストとして松田さんが達成したいことを聞いてみました。
「繰り返しになりますが『業務改善職』をもっと世の中に広めていきたいです。現在、新型コロナウイルスという脅威によって、日本経済は未曾有の危機に瀕しています。私の周囲でも、事業が停滞している企業がたくさんあります。オフラインでのコミュニケーションができなくなった途端、事業がスピードダウンしてしまったケースが数多く存在しています。こんな状況だからこそ、kintoneを始めとしたクラウドの活用やオンラインでのコミュニケーションをどんどん広げていかなければいけないという使命感があります。今は社内の中の誰かが片手間でやっている業務改善を『業務改善職』という新たな形で認めてもらう。私はそのように世の中を変えていく必要があると思っています」
松田さん、どうもありがとうございました!
2020年から始めたYouTubeチャンネル:プロジェクト・アスノート kintone業務改善道場
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